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建築家であり 音楽愛好家でもある 私の雑記帳

このブログについて

私は兵庫県神戸市に住む建築設計士です。
私の主宰する設計事務所は、住まいをお作りになりたい方からのご依頼を受け、その設計を行うことを主業務としていますが、特に音楽のためのスペース(防音室、ピアノレッスン室、楽器練習室、オーディオリスニングルームなど)について専門性を有しており、この分野では全国でも数少ない設計事務所の一つとして、音楽家・音楽愛好家の皆様のお住まいや音楽ルーム作りのお役に立たせていただいております。

このブログは、その設計事務所のサイトを補完するものとして、日々の雑感的なことや趣味のことなども話題にしながら、書き綴っています。

私どもの、住宅設計や防音室についての詳しい業務や考え方、また実績写真などをご覧になりたい方は、
設計事務所のサイト(左の文字をクリックすると、そのサイトが開きます)へお越し下さい。
どうぞよろしくお願いいたします。

遠藤 真 ・ 安田倫子 設計室

相談室 : 兵庫県神戸市東灘区向洋町中1-18 リバーモールイースト
TEL/FAX : 078-611-0469    携帯 : 090-3946-5450
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住まいの設計におけるノスタルジー性(なつかしさ)の大切さ

これまでたくさんの家を設計にたずさわってきました。
私は建築家(設計事務所)なので、ハウスメーカーのように規格型住宅をベースとする家作りとは違い、一つ一つの家においてクライアント(施主)さんと向かい合い、その意向を汲み取った家をつくることを仕事としてきました。
(ただし建築家のすべてがそのような考え方ではなく、自分の設計ポリシーを頑なに守る(悪く言えば押し付ける)建築家もおられることは私も承知していて、それを悪く言うつもりはありませんが)

そのような仕事の中で最近感じることは、クライアントさんがご自身の心において「なつかしさ」を感じられる家というものがあって、それを再現することを望まれているケースが増えているということです。
一昔前までは、そのようなクライアントさんは比較的少なくて、未来志向ともいえるようなモダンでシャープな造形の家に一種の憧れを持っているかたも多く、むしろそのような家を設計するのが建築家だと思われていたようです。
しかし、だんだんとそのような未来志向が影を潜めて、むしろ懐古志向とでもいうのでしょうか、自分の昔の「なつかしさ(ノスタルジー)」が感じられる家に住みたいという方が増えているように感じます。
そのことを懐古趣味という、いささかネガティブな意味合いを含んだ言い方でくくってしまうこともできるかもしれませんが、私はそのように一口に言ってしまえることでもないように思います。

昔、「住宅は住むための機械である」と豪語した建築家もいたと聞いていますが、その時代にはその時代の考え方があったとはいえ、現在においては通用しない言葉でしょう。なぜならば、家というものは、現代においては寛ぎや憩いという情緒的な安定のためスペースとしても意味合いが強く求められているからです。
そこにおいて、一人一人が持っているノスタルジー(なつかしさ)の再現というのは、住まいを設計する上においてのきわめて大切な要件であるように思われるのです。
私は最近のそのような住まいの設計思潮のシフトを、明るい気持ちで肯定的に受け取っています。

(次回は、それを象徴する二つのこと「ヴォーリズ設計の住宅」のことと「同潤会アパート」のことを述べてみたいと思います。)

「何か防音室に特別なことをしてあるんですか?」

先日、私どもが作った音楽ルームのオーナーさんから、次のようなメールが来ました。
(個人情報に当たる部分は少し略していますが、ほぼ原文のままです)

「きょう、私の防音室を 演奏活動をしておられる ヴァイオリン、チェロ、ピアノ の トリオの方が 使ってくださいました。
終わったあと 『こういうところは すぐにクッと耳に圧迫感が来るのだけれど ここは音の響きがとてもよかった ○○(公共の音楽ホール)の練習室よりも こちらの方がかなり良い』 と 口々におっしゃいました。
先日も 演奏活動もされているピアノ講師の方に『とても響きがいいのだけれど 何か防音室に特別なことをしてあるんですか』と きかれました。
耳のこえた方々に 褒めていただいています。本当に嬉しくて 改めて 感謝しています。
嬉しくて 報告したくなりました。」

このようなメールをいただき、こちらもたいへん嬉しくなって感激しましたが、この「何か防音室に特別なことをしてあるんですか?」というのは、実はよく言われることなのです。
その答えは、ある程度特別なことはしています。それは壁・天井・床における吸音要素と反響要素の配置です。たとえ狭い空間であっても広く感じられて、音に伸びやかさや余裕感、潤いを与えるノーハウがあるので、それを駆使していることは事実です。(具体的なことは、この場ではお伝えすることができませんが、いわば優れた楽器製作者が持っている独自の技法のようなものです)

とはいえ、長年音楽ルームづくりをやっていますと、部屋を見れば音が想像できるようになります。(それは私自身が楽器を演奏する音楽愛好家で、いろんなところで部屋の音響を体験しているからかもしれませんが)
新築の場合だけではなく、既存の部屋をリフォームして防音室にする場合でも、工事前の部屋の形を見れば、完成後の形と音がイメージできます。またクライアントさんとお話をして、演奏される楽器のことを聞いたり、どんな音楽がお好きかということを聞けば、どのような音にすればよいかがわかります。

このような感性は私だけでなく、当設計室において実際の防音工事を担当する三宅や片山も同じように、いや私以上に持っています。このことが、音楽ルームづくりにはたいへん重要なのです。
上記のノーハウも、そのような感性があっての上で生きてきます。
そういう意味では、やっぱり私の設計室が創る防音室は「何か特別なことをしてある」と言えるように思います。

防音すると、音が悪くなる?

すこし前に、ちょっとショックなことがありました。
ある音楽家の方と話をしていたとき、その方が別の音楽家から「防音室なんてだめよ、そんなの作るとかえって音が悪くなるから」と言われたというのです。
防音室を作る仕事をしている者としては、ちょっとショックなんですが、わからないでもありません。実際、そんなケースが多いのです。

私の設計室では、本当は「防音室」を作るのではなく、「音楽室」をつくることを目的として仕事をしています。“音楽を”、いつでも気兼ねなく、“良い音”で思う存分に楽しめることが目標です。
ですから「防音」(正確に言えば「遮音」)というのは、そのための一手段にすぎません。遮音をすると同時に、その部屋の音響についても、常に考えて「音楽室」作りをしています。

でも、世の中には、音楽のことや楽器のことが全くわかっていないのに防音工事を仕事にしている、レベルの低い工事屋が無数にあって、そんなことろは、ともかく音を止めればいいんだろ、遮音すればいいんだろ、という感覚で、室内音響がどうなるかなどということなど殆ど考えずに工事しますから、始めに書いたような、防音室を作ったら、かえって音が悪くなったということが、あっちこっちで数多く発生しているんです。

本当に嘆かわしいことですが、日本においてはそれが現実。
どうか、音楽家の皆様は、間違ってもそのような所に工事を依頼しないように、気をつけてください。
もう一度言いますが、「防音室」を作るのではありません、「音楽室」を作るんです。
「音楽室」を作れる人に依頼しないといけません。

防音室の中で鳴るのは「音」ではなくて「音楽」

楽器練習室であれ、ピアノレッスン室であれ、オーディオリスニングルームであれ、その中で鳴るのは「音」ではなくて「音楽」ですよね。
ところが、こういった部屋(一般に「防音室」と称されるもの)には、物理的現象としての「音」しか視野に入れていないものが、あまりにも多いように思います。
つまり近隣に対する遮音だけは、やっているが(実際は、それもいい加減な「防音室?」が多いんですが)、内部の音響は吸音しすぎてカスカス、あるいは反響過多でキンキン。
それはダメです。
防音室の中で鳴るものが「音楽」でなく、物理的現象としての「音」としてしか捉えていないから、そのようなことになります。

「美しい食器で食べると美味しい」のと同じこと。(2018/06/25の記事)

「音楽」のための空間を創るという姿勢が、作り手(防音室の設計・施工者)になければ。

美しい食器で食べると美味しい

食事は、美しい食器で食べると美味しいです。
音楽も同じ。美しい部屋で聴くと、素敵に聴こえます。
だから、音楽の部屋はデザインがとても大切。

当設計室は、一級建築士・音響設計士・インテリアデザイナーのコラボレーションで、品位の高い音楽空間を創ります。

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「堺の家」の音楽室

有意の騒音 と 無意の騒音

皆さんは、音に、有意の音と無意の音という区別があるのをご存知でしょうか。
有意の音というのは、例えば話し声とか、音楽の音などのように“意味”を持っている音のことをいいます。それに対して、無意の音というのは、風の音や交通の走行音などのように、特別の“意味”を持たない、単なる音のことです。

そして、防音ということについて考えるとき、この有意の音、無為の音という概念は、たいへん重要な意味を持ちます。それはなぜかというと、有意の音というのは無意の音にくらべて、小音量であっても耳につくからです。

たとえば地下鉄に乗っている時のことを考えてみましょう。地下鉄の車両内にはかなりの騒音があります。しかし、そんな中でも多くの人は、それほど苦には感じていません。なかには眠っている人もいるくらいです。ところが、隣に座っている人が、イヤホンで音楽を聴き始めたとしましょう。そしてその音がイヤホンから漏れてきた場合、それは地下鉄の走行音などとは比べ物にならないくらい小さい音であるにもかかわらず、耳に付いて、たいへん居心地の悪い思いをしたことのある方は多いのではないでしょうか。
それは地下鉄の走行音が無意の音であるのに対して、イヤホンから漏れてくる音は有意の音であるからです。

そして私たちか作る防音室は、音楽を演奏することを目的とするのですから、有意の音を取り扱うことになります。そこが同じ防音でも、交通騒音などに対する防音とは、かなり違った考え方をしなければならないところです。
無意の騒音ならば、ある一定の防音性能を持たせて、計測値をあるレベル以下にすれば、それで解決する場合が多いのですが、音楽のための防音室は、外へ漏れ出す音が、いくら計測値としては小さても有意の音であると、やはり耳に付いてしまいます。ですので、メロディーやリズムが判別しにくくなるような音にまで遮音性能を高めて、無意の音として感じられるようにする必要があるのです。

音楽のための防音室を作るにあたっては、このことをよく認識しておかなければなりません。
でも、このことをよく知らない(有意の音と無為の音という区別もご存知ではない)防音屋さんが多いのも事実です。よく、防音工事を行ったあとで騒音計というものを取り出して音を測り、ほら30デシベルも音が小さくなりましたよ、などと言って、それで事足れりとしている防音屋さんが多いのですが、騒音計は有意の音と無意の音を判別することはできません。
音楽のための防音室は、単に計測値が小さくなったことだけでなく、有意な音を、無意な音と感じられるレベルにまで小さくすることができたかどうかが、かんじんなのです。それをよく認識しておくことが、満足できる防音室を作るために、とても大切なことなのです。

本格的オーディオルームの工事が進行中

(2015年12月10日 記載)

神戸市で、本格的なオーディオルームの工事が進行中です。
木造2階建ての新築住宅(全体設計も当設計室で行いました)の一室が、高度な遮音性と室内音響を持った、オーディオリスニングルームになっています。
広さは、28㎡(約17畳の大きさ)、天井の高さは最低部でも3m、最後部は4.1mあります。

工事中の写真をお目にかけます。

オーディオルーム工事中2

外部(近隣)に対して、高い遮音性を実現するために、建築本体の壁の内側に空気層を空けて防音壁を建て二重壁としますが、この写真は、その防音壁の工事を行っているところです。壁体内に吸音材を施工しています。

オーディオルーム工事中1

上の写真より、もうすこし工程が進んだところです。
壁面には、吸音性パネルと反射性パネルを交互に張って、部屋全体の音響特性を調整しています。
天井も二重天井になっており、吸音天井パネルの施工が完了しています。
写真の右端にある開口部は、リビングルームからの出入り口で、高さは2mです。それと比較すると、天井が高いことがわかると思います。
なおこのオーディオ室の床は、リビングなどの一般室の床よりも30センチ低くしています。こうすることによって、高い天井高を確保しているのです。
また天井は全体を傾斜させて、特定の周波数の音が共鳴するのを防いでいますが、ご覧のように、梁などが室内に露出していません。梁などが室内を貫通すると、音響を乱したり、遮音上の弱点になるので、それらが内部に出ないように、建物本体の構造設計をおこなっているのです。

このようなことは、建物全体の基本設計から防音室の工事まで、当設計室でトータルで行うことによって、可能となります。一般のハウスメーカーや、単なる防音業者では、多分できないと思います。

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(追伸・2016年1月26日 記載)

この建物は、すでに完成しました。
完成写真ができ次第、このブログにアップロードする予定です。

当設計室の作る防音室の特長(音楽室に大切な4つの要素)

はじめて私どもの設計室にご相談のお電話やメールをいただいた方から、よくご質問があるのが、「遠藤安田設計室の作る防音室は、他の防音工事会社のものと、どのような違いがあるのか」ということです。

一口で言いますと、「音楽室には4つの重要な要素があり、それを総合的に満たすような部屋を作る」ということです。

その4つの要素とは
・遮音性能
・室内音響
・室内環境
・室内デザイン
です。

それぞれにつきまして、簡略に要点を述べて見たいと思います。

(1)遮音性能
防音室を作りたいと思われるお客様が、まず要望されるのが、近隣の住居や、住宅内の他室などに対する、十分な遮音性能です。これにつきましては、私どもの設計室に限らず、普通の防音工事会社でも十分なノーハウを有していると思います。
(ただし、一般の工務店やハウスメーカーなどは、遮音の基礎知識さえ殆ど理解しておらず、ただ壁に吸音材を詰め込んだり遮音シートを貼ったりすれば、それで防音ができると考えているところがあります。そのようなところに依頼すると、十分な遮音性能をもたない防音室?ができてしまうことになりますので、ご注意ください。)

(2)室内音響
上記のように、遮音性能は普通の防音工事会社でも大丈夫なのですが、その部屋(音楽練習室、ピアノレッスン室、オーディオリスニングルームなど)の室内音響のことになると、怪しくなってくる防音会社があります。
実際、私どもの設計室へのご相談の中にも、「防音室を作って近隣への音は小さくなったのだけど、その部屋で弾く楽器の音がたいへん悪くなってしまって悩んでいる」というケースがたくさんあります。
これは、その防音工事会社が、音楽や楽器のことについて、どれくらいの知識とセンスを持っているかということに関係します。
防音室は、音楽を楽しむための部屋なのですから、室内音響特性は、きわめて重要な要素ですから、そこでどのような楽器が演奏され、どのような曲が演奏され、そしてクライアント(お客様)はどのような音楽を好んでおられるのかということを理解して、それを実現する能力が必ず必要です。
しかし防音工事会社の中で、その能力を有しているところは、必ずしも多くないのが現状なのです。
(防音工事会社の中には、交通騒音対策を本業としているところも多く、そのようなところは音楽に対する知識や理解力は皆無の場合があります)

(3)室内環境
ここまで書いてきました遮音性能や室内音響は重要な要素ですが、音楽室の良さは、それだけで決まるわけではありません。その部屋が快適であるかどうかは、音楽活動をしたり音楽を楽しむための大切な要素です。特に防音した部屋は、密閉度が高くなりますので、空調・換気などに対する配慮は重要です。

(4)室内デザイン
部屋のデザインは、音とは関係がないと思っておられる方がいらっしゃるかもしれませんが、ほんとうにそうでしょうか。
確かにサウンドレベルメーター(騒音計)などの機械で計測した値は、デザインとは関係がないかもしれません。
しかし音楽を楽しむ時に、その部屋のデザインは、私たちの感受性に大きな影響を持っているのではないでしょうか。
美しい部屋で奏でられる音楽は、必ず美しい印象と余韻を心にもたらすと思います。
室内デザインにおいては、壁のクロスや窓のカーテンなどのファブリック、家具、それと照明デザインなどが重要な要素であることは言うまでもありませんが、私どもは、これまでの経験から、天井の高さというものが、音楽を楽しむ人に与える心理的影響というものを重視しています。
天井が高いことは、開放感や余裕、大らかさといったものを感じさせてくれます。(逆に低い天井は、閉塞感や窮屈わと感じさせられます。)
ですので私どもは、音楽室を作るときは、可能な限り天井を高くするようにしています。このことは、(2)の室内音響の点でも、たいへん良い効果をもたらします。見た目だけでなく音自体も、開放感と大らかさを持ったものになります。
ところが普通の防音工事会社が作る防音室の中には、天井がきわめて低いものが少なくありません。天井に手が届いてしまうようなものや、ヴァイオリンを弾くと弓が天井に当たりそうになってしまうようなものまであります。
防音室は、二重床や二重天井にする場合が多いので、どうしても天井が低くなってしまう傾向はあるのですが、それは設計段階のいろいろな工夫によって解決することが可能です。
ただし、そのためには防音室(音楽室)を設計し施工する者が、防音のことだけでなく、建築物の全体構造について正しい知識を有していることが必要です。しかし防音工事会社の中には、その能力のないところも多く、何の工夫も無く、天井の低い部屋を作ってしまっているケースがたいへん多いのは残念なことです。

さて、私どもの設計室は、以上述べました(1)から(4)までの要素を、しっかりと配慮し、それらを総合的に満たす、良質の音楽室(防音室)をつくっております。
それができるのは、私どもの設計室のスタッフが、単なる防音工事屋ではなく、音楽と建築の両方の専門家によって構成されているからです。

遠藤 真・・・主に設計を担当・・・一級建築士、音楽愛好家(演奏と鑑賞)
三宅久夫・・・主に施工を担当・・・二級建築士、ピアノ調律師(楽器について知悉)
安田倫子・・・主にデザインを担当・・・インテリアコーディネーター

ホームページもご覧下さい。よろしくお願い申し上げます。

段ボール防音室の遮音性能

段ボール製の防音室というものが売られているのをご存知でしょうか。
いくつかの会社から似た仕様のものが売り出されているようですが、たとえば「だんぼっち」などという製品が代表的なもののようです。http://www.danbocchi.com/ で見ることができます。

ところで先日それらのうちの一つのサイトを見ていましたら、その段ボール防音室の内部での音量が90dB(デシベル)だったものが、その外側(防音室から1メートル離れたところ)で測ったら60dBになっており、すなわち30dBも音が小さくなりました、ということが書いてありました。
これだけ見ると、その段ボール防音室の遮音性能(透過損失)が、30dBあるように受け取れます。
30dBの遮音性能というと、どれくらいかというと、ヤマハのアビテックスの普及タイプの遮音性能が30dBなんです。
つまり段ボール防音室は、アビテックスと同程度の遮音性能がある!・・・ということになるんでしょうか?
(ちなみにアビテックスの値段は、最小の0.8畳のものでも約50万円しますが、それと同程度の大きさの段ボール防音室の値段は約8万円。)

問題は、段ボール防音室の音量の測定方法にあります。
まず室内での音量が90dBだったということですが、音源は何でしょう。そしてその音源からどれくらいの距離のところに騒音計を置いて測ったのでしょう。
仮に音源が防犯ベルとか目覚まし時計のようなものだったとして、その音源から10センチのところに騒音計を置いて測ったとしましょう。その測定値が90dBであることは、十分ありえることですので、これについては何も問題はありません。
問題は防音室の外で測った時のことです。1メートル離れて測ったということですので、音源(防犯ベルとか目覚まし時計)がその防音室の中央くらいに置かれていたとすると、音源と騒音計との距離は約1.6メートルくらいと思います。

ところで音というものは、当然のことですが、音源に近いところでは大きく聞こえ、そこから離れるにしたがって小さく聞こえます。数値としては、音源との距離が2倍になると、6dB下がります。
すなわち音源から10センチのところでの測定値が90dBだったとすると、20センチのところでは90-6=84dBになるのです。距離が2倍になると6dB下がるのですから、音源からの距離が40センチになると、20センチの時にくらべて更に6dB下がって、84-6=78dBになります。
同様に、音源から80センチのところでは72dB、160センチのところでは66dBになります。

これはどういうことかというと、防音室のようなものに入れなくても、単に音源から離れていくだけで、1.6m離れれば測定値は66dBになるのです。
上記段ボール防音室の場合は、音源から1.6mの位置で測定値が60dBだったのですから、段ボール防音室の遮音性能は66-60=6dBにすぎない、ということになります。

このように音源との距離が大きくなれば測定値は小さくなっていくのですから(これを距離減衰と言います)、音源と測定位置との関係を無視して数値を比較しても、全く意味がありません。

まあ上記の段ボール防音室のことなどは、子供だましのようなことなのですが、建築工事として防音室を作る防音工事業者の中にも、完成後に騒音計で測定してみせるところがあります。
その場合も、例えば音楽室の中でピアノなどの音源に近いところで音量を測定した後、外に出て(つまり音源であるピアノから離れて)音量を測定して、ほらこんなに小さくなりましたと言われても、それはその防音室の遮音性能(透過損失)を表しているわけではないということに注意しておく必要があります。

防音室、どうすればローコストにできるか

一般的に防音室の工事費は、かなり高額と言われています。そして、たしかに高額です。
例えば、ヤマハ・アビテックスのホームページには、見積りシミュレーションというのがありますが、6畳タイプ(実際の面積は5.2畳)の自由設計防音室で、夜11時頃までクランドピアノを弾くという想定で入力しますと、出てきた金額は、344万円!
いやあ、高いですよね。しかも、お金は高いのに天井の高さは2.19mしかない。(普通の部屋よりずっと低い)

当設計室の作るオリジナル設計の防音室は、同等の遮音性能で、しかも天井の高さが2.50mのものが、その半額でできるのですが、それでも170万円くらいになります。
比較すると安いですが、それでももっと安くすることはできないでしょうか。

防音室を単体で考えると、それくらいが限度なのですが、そうではなく、防音室を含む建物全体として考えていくと、話は変わってきます。
防音室を建物全体の中の、どの場所に配置するのか、音を伝わらせたくない寝室や子供室などとの位置関係をどうするか、近隣住居との位置関係や距離をどうするか、窓などの開口部をどのように配置するか、あるいは半地下にしたり構造上の工夫をしたりすることはできないか、このような設計上の配慮と工夫によって、防音室本体の工事費をかなり減額することができるからです。

そのためには、建物全体の設計の当初段階(全体の間取りを考える基本設計の段階)から、防音のことを念頭に置いた設計をしていくことが必要です。
そうすることによって、更なる減額ができるようになります。
上記の例では、100万円程度で、良好な遮音性能を持った防音室をつくることも可能になります。

ポイントは、住宅設計と防音室設計を別々に考えるのではなく、両者をしっかりとリンクさせて考え、設計を行っていくことです。
ところが、残念ながら現実としては、それが行われていることが、たいへん少ないのです。
それはなぜかというと、住宅の全体設計をする者は防音についての知識や経験が少なく、一方、防音室を作る者は建物の全体設計に対する知識に欠けているからです。
そのため、両者がしっかりとリンクして設計をまとめ上げていくことができないのです。
それを音楽の例で言うと、作曲家が演奏技術のことを知らず、演奏者は楽譜が読めないようなものです。そんな作曲家と演奏者のコンビで、まともな音楽ができるはずがありません。
ところが残念なことに、防音室をもつ住宅づくりにおいては、そのような状況がたいへん多く見られるのです。

それに対して、当設計室は、住宅全体の設計と防音の設計を、完全にリンクさせた設計が可能です。
なぜならば、全体設計を行う建築家は一級建築士であるとともにアマチュア音楽家として音楽や音響についての知識と経験があり、一方防音の設計と工事を担当する音響技術者は、音や楽器についての知識は言うまでもなく、二級建築士の資格を持ち、建物の設計や施工についての知識をも有しているからです。
さらに、住宅各部のインテリアデザインや、キッチンなどの設備関係については、インテリアコーディネーターが、そのセンスを活かした、きめ細かいコーディネートを行います。

このように、建築家、音響担当者、コーディネーターの3者が一体となって、防音室のある家作りを行えるのは、全国広しといえども、たいへん少ないのではないかと思います。

防音室を作りたいけれど、費用の点で二の足を踏まれてる音楽家の先生方や、音楽愛好家の皆様は、ぜひ一度ご相談ください。
きっとご希望を実現できると思います。

音楽室

当設計室で設計・施工した音楽室の例。写真では分かりませんが、敷地の傾斜を利用した半地下構造となっており、遮音工事費を低減しています。正面の壁には、ウィリアム・モリスのデザインした壁紙を用いています。天井は2.55mの高さがあります。

本来の仕事は家全体の設計なのですが・・・

私の設計室が、音楽室(防音室)の設計と工事を手がけるようになって数年がたちました。
ホームページやブログを見た方からの、いろいろなご相談を受けて、実際の仕事として防音室の工事をさせていただくのは大変うれしいのですけれど、私の設計室のことを防音工事専門業者と思われている方が、けっこうおられるのが、実はちょっと残念なのです。

私の設計室は、元々、住宅全体の設計を本来の業務としてきて、多くの実績を残しています。
その業務の中で、いわば付帯業務として始めたのが、防音室づくりです。

ところが私どものように、建物の総合的な設計を行うことができる一級建築士であり、同時に音響的な設計にも通じていて、かつ音楽や楽器についての知識もある設計士がたいへん少ない(というか殆どいない)ので、防音室作りの方がクローズアップされてしまったようです。
(私自身がその点をセールスポイントにしたのも事実ですけど)

そのために、ご相談にこられるお客さんの中には、家全体の設計は、別の設計事務所やハウスメーカーに依頼しなければならないと思っておられる方がおられて、防音工事だけを私どもに依頼される場合があります。
もちろん、すでに出来上がっている建物において防音室をつくる場合は、それでいいのですけれど、これから一から新築をする建物においても、そうしようとされるかたが多いのです。(というより、そうすべきものだと思われている)

それは違うんです!
私の設計室は“家全体を設計する”のが本来の業務なんです!
そして私どもが防音室を手がける理由は、当初から防音室を建物全体のどこに配置するかを考え、近隣住戸との位置関係を検討し、さらに自らの家の他室(寝室や子供室)との位置関係も十分に考慮していくという基本設計が、とても大事なことだからです。

さらに音楽室の音響を良好なものにするためには、その形状、特に天井の高さが大切な要素であり、それを十分に確保するためには、建物全体の基本構造を当初から考慮して設計しておかなければならないからです。
(他でも書きましたが、その点をおろそかにして防音室をつくってしまって、その音響の悪さや、部屋としての居住性の悪さにがっかりされて、私どもにご相談に来られるかたが、本当に多いんです)

そのためには、家全体の設計と防音室の設計の両方が、しっかりとリンクして行われなければなりません。
それは単なる設計事務所(建築士)ではできませんし、単なる防音工事屋さんでもできません。
それができることが、私の設計室の強みなんです。
そこのところをご理解いただいて、防音室を作る際は、ぜひとも私どもに家全体の基本設計からタッチさせていただきたいと思っています。

北海道で、音楽練習室(防音室)の工事

北海道で音楽練習室の施工依頼があり、先日完成しました。

インターネットで私の設計室のホームページをご覧になった方からお電話があり、半年ほど前にご自宅を地元の工務店の工事で新築されて、その中に音楽練習のための約10畳の大きさの防音室を作られたのだけど(奥さんはピアノを、ご主人は金管楽器を演奏される)、その部屋の音が悪くて、なんとかならないだろうかというご相談でした。
その後にいただいたお手紙の一部を記します。(一部、音と関係のない部分を略していますが、ほぼ原文どおりです)

「このたび一番希望していることは、防音室内でピアノや金管楽器を演奏する時に快適な音響を得たいということです。現在の防音室は、吸音材の壁で覆われているために響きが全く無く、心地よい楽器の響きが感じられません。ピアノの音は、演奏者に音が返ってこないので、ペダリングを多用してしまうなどの問題がおこっています。金管楽器を吹くと、向きによっては弱音器をつけたような変な音に聞こえます。計画段階から専門の方に相談すべきであったと後悔しております。
もう一つ希望していることは、深夜でも音が出せるようにしたいということです。現在、子供の部屋などのある2階に、1階よりもはっきりと音が聞こえる状況で困っています。」

そんな状況で、何かよい解決策はないかと、いろいろインターネットで調べておられたところ、私どもの設計室のページに行き当たられたそうです。そして、そこに書いてあることを読まれて、これだ、依頼するのはここしかないと感じられて、連絡をされてきたそうです。

お手紙に書かれている内容は、まさに、音楽や楽器の響きのことを知らない業者がやった防音室の、典型的なケースです。
ですから私どもとしては、このようなご不満を解決することは、工事的には全然問題なくできますし、言うなれば朝飯前のことなのですが、場所を聞いてビビりました。
北海道、しかもかなり北の方だったのです。

私どもは事務所が神戸にあるので、仕事も京阪神が多く、実は一番遠いところでも名古屋までしかやったことがなかったのです。
それでともかく音響工事担当のM氏と相談したのですが、彼いわく、既存住宅内の防音室の音響を改善するということなら、できますよということだったので、引き受けることにしました。

施主さんとは、できるだけ電話やメールで相談し、図面や写真を送ってもらって具体的な工法を決め、見積書も提出しご承認を得た上で、担当のM氏が、現地に赴くことになりまました。
しかし工事をするためには、工具やある程度の資材は持っていかなければなりませんから、飛行機で一っ飛びというわけにはいかず、車で神戸から舞鶴まで本州を横断し、そこからフェリーに乗って20時間波に揺られて小樽に到着。そこから目的地まで再び車で350キロを走破という、まるまる2昼夜をかけた行程となりました。

M氏は現場近くに宿をとって、そこから7日間、現場に通いつめて、工事を完成させました。

なかなかハードな工程ではありましたが、結果は、施主さんにたいへんご満足をいただき、喜んでいただいて、次のようなメールをいただくことができました。

「この度は本当にありがとうございました。響きはとてもいい感じになりましたし、工事もとても丁寧にしていただいて大変感謝しております。
ピアノもお陰様で音が響くので、軽いタッチで弾けるようになりましたし、金管楽器も実力以上に音が良くなった錯覚?で気持ち良く吹いています。また、工事前は家中に響いていた音もかなり抑えられ、家族で気兼ねなく音楽室を使うことができるようになりました。
本当にありがとうございました。」

とても嬉しいメールで、お引き受けしてよかったと思いました。
ただ、私として惜しむらくは、この音楽室は天井高が2.15mしかなく、本当はもっと高くしたかったのですが、それだけは元の構造体がそういう造りになっていたので、どうしようもありませんでした。
少なくとも2.4mあれば、もっと伸びやかな音にすることができて、響きの改善と相まって、さらに豊かで気持ちの良い音響にすることができたのにと残念です。
でもそれは、新築の設計段階から、それを考慮して構造体の設計をしておかなければならないので、仕方がありませんでした。

ともあれ、そんなわけで、今回の経験によって、日本国内ならどこでも対応できるという自信がつきました。
北海道に比べると、これまで最遠だった名古屋なんて、なんと近いところでしょう。
ですので、ご遠方であっても音のことで悩んでいる方がおられましたら、どうぞいつでもご相談のお電話かメールをください。しっかりと対応させていただきます。

クラシックのコンサートに一度も行ったことがないようなオッチャンが   音楽レッスン室の防音工事をしているという現状


前回、"外に対する防音だけでなく、内に対する防音もしっかりと行う"ということを書いたのですが(その記事はこちら)それとともに私どもへの相談で多いのが「部屋を防音したら、今までよりも音が悪くなった」という相談なのです。

普通の部屋を、防音工事を行うことによって、きちんとした音楽室にしようとしたのに、よもやそれによって、かえって音が悪くなることがあるとは、皆さんは思ってもみないかもしれません。でも遮音はよくなって近所に対する音漏れは少なくなったけれど、ピアノの音がカスカスした音で全然響かなくなってしまったというケースは、かなり多いのです。

その原因は、たいていの場合、不適切な吸音材の使用なのですが、それ以前の問題として、そもそも防音業者の中には、音楽についての知識や素養が全くない者が、たいへん多いということがあります。そのような業者は、音が外に漏れないようするという遮音のことは考えていても、音楽室内部における「楽音(がくおん)」について全く念頭にない人がほとんどです。

皆さんは、防音工事をする業者ならば、ある程度の音楽的素養は持っているだろうと思っているかもしれませんが、実は防音工事を行っている業者の中には、道路からの交通騒音や、飛行場の近くの騒音を防ぐという工事から入った人が多く、そのような人は音楽についての知識や感性が全くない場合が少なくありません。実際、クラシックのコンサートへ一度も行ったことがなかったり、グランドピアノの音を間近で聴いたこともないようなオッチャンが、音楽レッスン室の工事を行っているというのが、ほとんどなのです。

そのような業者は、音楽的な良い音、良い響きというものがどのようなものなのか全くわかっていませんから、ただ遮音をすることだけしか頭になく、そのために室内の壁や天井にやたらに吸音材を使用して、楽器の音を殺してしまうということを平気でしてしまうのです。

そもそも音楽室を作る目的は、そこで良い音や良い響きを楽しむためであって、遮音対策もそのための有効な手段の一つですが、それと同じくらいか、あるいはそれ以上に大切なのが室内音場(音質や響き)の調整です。しかし、そのことが全くできない(というよりそのことが念頭にない)防音工事屋が本当に多いのが、この業界の現状なのです。

ですから皆さんが"音楽室のための"防音工事を依頼するならば、必ず「音楽を分かっている人」に依頼しなければなりません。そうでなければ、失望的な結果になります。どうかその点に、くれぐれも気をつけていただきたいと思います。

防音は外より内をしっかりと

はじめて防音室をつくることになって、私どもの設計室に相談に来られたお客様は、たいてい次のようにおっしゃいます。

「夜や休日にピアノを弾いても、お隣やご近所に迷惑がかからないようにしたいんです。だから外に音が漏れないようにしっかり作ってほしいんです。え?家の中の他の部屋についてですか。それは少しぐらい聞こえてもいいんです。家族なんですから。」

ところが、すでに他の工事会社で作った防音室を持っておられて、それに不満があって相談に来られたお客様は、たいてい次のようにおっしゃいます。

「家の中の他の部屋に音が伝わらないようにしてほしいんです。私がピアノを弾くと、主人がうるさがります。息子は受験勉強に身が入らないといいます。え?隣近所ですか。それは今のままでいいんです。特に苦情もありませんし。」

そうなんです。本当に注意しなければならないのは、家の中の部屋どうしの遮音なんです。しかもそれがなかなか難しいのです。
近所の家に対する防音については、両者(両家)はそれぞれの外壁という比較的厚くしっかりした壁で向き合っています。しかも両者は互いに距離があります。そして構造的にはつながっていません。別々です。

ところが一つの家の部屋どうしは、間仕切壁という、比較的薄くシンプルな作りの壁で仕切られているにすぎません。天井裏などはそのような仕切りもなく、つうつうです。そして部屋どうしは互いに接しており、構造的にも一体です。

どう考えても、隣近所への遮音よりも、家の中の部屋どうしの遮音のほうが、格段に難しいのです。

だからお客様が、近隣への遮音はしっかりしてほしいけど、家の中の部屋どうしはそこそこでいい、とおっしゃっても、決してそれを真に受けてはいけません。
それを真に受けて、部屋どうしの遮音をおろそかにすると、必ず後で問題になります。

ところが防音工事の(特に音楽室についての)経験の少ない設計士や工事業者は、そのことに思い至らず、また工事費を安くあげるために、部屋どうしの遮音をおろそかにしてしまうことがたいへん多いのです。

ですから皆さんが防音室をお造りになるときは、設計士や工事業者に対して、近隣に対してだけでなく、家の中の部屋どうしの遮音もしっかり行ってほしいことを、きちんと告げるようにしてください。
でないと、せっかく防音室をつくったのに、やっぱり気兼ねしながらピアノを弾かなければならないといいうことに、なってしまいます。

(もっとも、それ以前に、近隣に対しても十分な遮音ができないような設計士や工事業者が日本には多い、というより殆どなので、そのことの方が問題なのですが・・・)



インターネットで、ある質問と回答を読んで

インターネットに、次のような質問と回答のやりとりが掲載されていました。

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【質問】 Rさん ( 大阪府 / 女性 / 39歳 )

ピアノ室の防音について

ピアノ部屋防音についてお伺いさせて頂きます。

・設置場所は木造1階
・15〜16帖のフローリング
・はき出し窓1つ、小窓2つ&入口1つ(予定)
・グランドピアノYAMAHA C2
・広く使いたいためピアノ以外は設置しない

新築を予定していまして、1階にピアノ教室を作りたいと思っています。
ピアノだけでなくグループレッスンも希望。

そこで工務店に防音をお願いしたところ、床も含めて壁全面に鉛のシートを入れ、窓はペアガラス、扉は分厚い防音用のもの。とのお返事を頂きました。

私としては防音と遮音、さらに音響のことを考えたいのですが、工務店としては「カラオケ店の防音は何度も経験しているからご近所への音の配慮は自信がある。しかし残響のことを言われてもわからない。どの材料を使用すれば良いのかパンフレットなどを探してきてくれたらそれを購入して施工します」とのことでした。

私も防音のプロではないので、「ご近所にご迷惑をかけない・ピアノを弾いても心地よい残響にして欲しい」との希望をお伝えすることしかできません。

防音室だけ別の業者にお願いすることは不可能との返答ですので、今後どのようにしていけば良いのか困っています。

アドバイス頂けないでしょうか。

また工務店の内容での効果は如何なものでしょうか。
ペアガラスと2重サッシの効果の違いなどについても教えて頂けると嬉しいです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【回答】 建築家 M氏 

Rさんこんにちは
○○建築工房のMと申します。

快適に楽器を演奏するためには、おっしゃるように、音を家の外に漏らさない''遮音''と、部屋内部の''音響コントロール''の両方が必要です。

**遮音
どの程度の遮音性能を望まれますか。
グランドピアノは、音量も大きく、音域が広いので、遮音難易度は高いです。

夜中でも気兼ねなく演奏できる(音を漏らさない)レベルにするのは、結構大変です。

ある遮音性能の壁で、スキマなく覆うことが必要です。
スキマから音が漏れ、性能の弱い部分で遮音性能が決まります。
窓、扉、換気扇は要注意です。
一般の住宅サッシは余り遮音性能は高くなく、はき出し窓は、サイズが大きく、遮音性能は悪いです。

ペアガラスは2重なので遮音性能が高いと誤解されることがありますが、周波数帯によりガラスが共鳴するので、単ガラスより遮音性能が悪いです。

この点だけを見ても、工務店さんの防音仕様はNGです。

**内部音響
音楽ホールの残響は、壁面からの時間差の反射音により生まれます。
16畳位のホールと比べ小さな部屋の場合、反射が強いと、快い残響でなく、うるささだけで、非常に不快となります。

吸音が強すぎると、演奏したとき音量が出ず、頼りなく感じてしまいます。

床はフローリングで、音を反射させるので、壁1面に厚手のカーテンを設置し、コントロールするのが良いと思います。

木造住宅でも適切に設計し、注意深く施工すれば、快適にピアノ演奏できる環境は可能ですが、工務店は余り知識がないようなので、アビテックス(ヤマハ)のような防音室を使うのが無難ではないでしょうか。

参考にしていただけたら幸です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とまあ、こんなやりとりです。

建築家M氏の回答は、ごく妥当な内容で、問題ありません。少なくとも最後の方の「・・・工務店は余り知識がないようなので」というところまでは。

しかしその後で「アビテックス(ヤマハ)のような防音室を使うのが無難ではないでしょうか。」って。
Mさん、それはないでしょう。その前に「適切に設計し、注意深く施工すれば、快適にピアノ演奏できる環境は可能です」とお書きになっているではないですか。
だったらどうしてご自分で設計し、監理してあげようとしないのですか。どうしてアビテックスのような既成防音室(しかも値段がべらぼうに高い)をお勧めしてしまうのですか。

結局Mさんも、工務店よりは知識はあるけれども、それを行う技術力はないということをさらけ出していることになりはしませんか。
最後に「参考にしていただけたら幸です。」とおっしゃっていますが、結局なんだかんだ言っても、最後にはアビテックスにしときなさいというのなら、それ参考にもなにもならないじゃないですか。

よくいただくご質問 「アビテックスと、どう違うの?」

私どもの設計室に防音についてご相談に来られた方から、当設計室で作る防音室と、ヤマハのアビテックス(フリータイプ)とは、どう違うのかというご質問をよくいただきます。
今回はそれについて、少しご説明してみたいと思います。

私どもの作る防音室も、アビテックスも、防音に対する基本的な考え方や、壁・床・天井などの部材構成は、ほぼ同じです。
もちろん細部においては、それぞれに特徴や工夫があるのですが、遮音性能は同等で、一般的な音楽練習室として必要かつ十分な性能を有していると考えています。

違うのは、部屋の形状の"自由度"でしょうか。
特に天井の高さや傾斜などについて、設計や工事上の自由度が違うようです。
このことは、見た目の良さや部屋としてのゆったり感だけでなく、音の響き具合にも大きく影響します。
そういったことも含めて、部屋の音や響きをどう創っていくか(音場調整)という点で、アビテックスとはその手法に、やや違いがあるようです。

それと、違うのは価格です。これははっきり言って、かなり違います。

ざっとそんなところなのですが、なんだかきわめて簡略かつ曖昧なご説明で申し訳ありません。
ただ私はヤマハのアビテックスを、性能的には高く評価しています。
ですので、それと同等かそれ以上に良い性能で、デザイン的にも美しく、しかも一般の方でも手に入りやすい価格でご提供することを常に念頭において、防音室の設計と施工を行っています。

ご相談にお越しいただいた方や、お電話をいただいた方には、より詳しいご説明をさせていただきますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

ピアノが防音室に入らない!?

インターネットの住宅相談のサイトに、次のような相談が寄せられているのを読んだのですが、皆さんどう思われますか。

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ピアノが防音室に入らない!?
(広島県 40歳代 女性 自由業)

 このたび、建築家に設計を依頼して、自宅を新築しました。ピアノを弾くので、防音室を作ることにし、設計士に十分要望を伝えました。今はアップライトピアノですが、将来はグランドピアノを入れたいとも伝えました。

 いよいよ住宅が完成し、先日引っ越しをしたのですが、廊下から防音室のドアに向けて、ピアノが入らず、いったん引っ越し業者に預かってもらっています。設計事務所に連絡すると、信頼していた設計士からは連絡もなく、事務員の対応は謝罪どころか「グランドとは聞いてなかった。サイズを聞いてなかった」など逆にこちらの方に高圧に対応してきます。

 ピアノを弾く者にとれば何よりも大切なピアノです。今どうしているのかと心配なぐらいです。どうすればいいでしょうか?

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私が思うに、ピアノが部屋に入らなかったのですから、投稿された方はその部屋ではまだピアノは弾いていないのでしょう。しかしもし弾いていたとしたら、その音にもっと失望されたのではないでしょうか。
だって、ピアノが入るかどうかが判断できない(あるいは考えが及ばない)設計士が、その部屋でピアノがどんな音で鳴るかを考えたり判断したりすることが、できるわけがないじゃないですか。

こと「音」に関する限り、建築家であれ、一級建築士であれ、信じてはいけません。
ましてやハウスメーカーや工務店の営業マンや下請け設計士を決して信じてはいけません。
でないと、高いお金をどぶに捨てることになるばかりか、耳と心の苦痛を同時に味わうことになります。

ではどうすればいいのか。
ベストの方法は、私たちの設計室に相談することです。
このように書くと、我田引水のように聞こえるかもしれません。 はい、我田引水です。

でも、私は自分自身も大の音楽ファンであり、楽器の演奏も未熟ながらたしなんでいますので、良好な響きの部屋で楽器を奏でたり歌を唄ったりすることが、どれほど心地よいかということを知っています。(またその逆のことも)
そして設計技術者としてそのためにはどうしたらいいかということも知っていますし、身近に経験豊かな音響工事のスタッフもいます。
ですから、音楽家の方々や同好の皆さんが、せっかく作られた音楽室やレッスン室のことで、がっかりされたり失望されたりされるのを看過することは、どうしてもしたくないのです。

だからあえて我田引水をしています。
どうぞいつでもお電話かメールでご相談くださいね。

おもしろい家の例(その2) 「屋根裏の隠れ部屋」

屋根裏というのは、もともとそこに空間が存在するので、そこに部屋をしつらえても、ほとんどお金がかかりません。
これは絶対に使わなければ損ですので、私の設計室では大いに利用するようにしています。
むしろ屋根裏を部屋として使うという前提で、屋根の形を決めたりすることが多いです。

当然のことながら天井は低いですし、斜めです。窓も十分に取れないこともあります。
でもそんな空間が、ことのほか面白いんですよね。
落ち着くというか。籠る楽しみ。

もちろん明るくてオープンな空間もいいんですが、人間って必ず籠る習性も持っているので、家中どこもかしこも明るいオープンだと、かえって安らげないと思います。
だから、籠れる空間って、私は本当は大切なものだと思うんです。
せっかく一戸建て住宅を建てるんだったら、そんなスペースを作らない手はありません。

で、そんな例をいくつか。



R01.jpg

これは、超オーソドックスな屋根裏部屋。
でもガラスブロックの小窓がいいでしょう。
満月の晩など、ここから入ってくる月明かりで、この空間は不思議な雰囲気を醸し出します。



R02.jpg

この屋根裏部屋は、前に屋上を設けていて、そこに出入りができます。
明るいですし、しかもプライバシーは十分で、個人の書斎などとして、一般室と同じくらいに快適に、しかも落ち着いて使えます。



@子供室ロフトa

これは、部屋自体としては狭いのですが、屋根が形状を利用して立体的な構成を行っています。
これまた、なにかおもしろい使い方ができそうだと思いませんか。



R04.jpg

これは「隠れ家」へ通じる階段の例。
屋根裏部屋に行くためには、どうしても階段が必要になりますが、できるだけ場所をとらないようにするために、コンパクトにして、ちょっと急な勾配にすることが多いです。でもそれが、かえって「隠れ家」へ通じるわくわく感を高めることになるんです。



R05.jpg

これは何?・・・秘密です。

おもしろい家の例(その1) 「部屋の中の狭い部屋」

3bed2a.jpg

なんだ、これは。とお思いでしょうが、これは部屋の中の部屋です。
施主さん(Aさん)の個人スペースなのですが、部屋の中にあえて小さな部屋を作っています。
そしてロールスクリーンで、まるで昔の「御簾の内」のように仕切られるようになっています。
(写真では、一部だけ巻き上げています。)

念のため申し上げておきますが、これはれっきとしたAさんご本人からの要望です。
Aさんは、狭い部屋にこもって、本を読んだり、寝転がったり、考え事をしたりしたかったのです。
それができるスぺースが、彼の家の第一要求でした。(ちなみに彼は、医師です。)
これは変でしょうか?私は全然変だとは思いません。きわめてまっとうで、共感できる要望ではないでしょうか。
そしてこのような部屋ができました。

部屋は広いのが良くて、天井が高いのが良くて、明るいのが良い、という世間の常識(こんなことは、いわれなき常識で、真実でもなんでもありませんが)、それに対するアンチテーゼのようなこの空間は、しかしクライアントにとっては、かけがえのない居場所です。
この空間は家の一部でありながら、Aさんにとっては、全世界に対峙して存在しています。

おもしろい家を作るということ(つまらん!おまえの・・・はつまらん!)

以前、何のCMだったか、縁側のようなところで中年息子役の岸部一徳が、なんだかうだうだと蘊蓄を垂れると、横にすわっていた老父役の大滝秀治が「つまらん!おまえの話はつまらん!」と一喝するコマーシャルがあった。
けっこう印象的で、私はおかしがるとともに、これって家のCMに使えるぞと思ったものだ。
すなわち、息子が新居を建てて、訪れた老父に、うだうだと蘊蓄を垂れて自慢しかけると、父親が「つまらん!おまえの家はつまらん!」と一喝するのだ。
これはなかなかいけるぞと思ったが、そんなコマーシャルは現れなかった。当たり前か。

ところで私の父は56歳で亡くなったので(私はその時28歳)あの岸部と大滝のような中年息子と老父という関係を持つことはできなかった。
しかし、もしもっと長生きして、私の設計した家を見て「つまらん!おまえの設計はつまらん!」と言ったとしたら、それもなかなかいいものだったかもしれない。
(もっともその役は、今では私の妻-パートナーの安田倫子-が引き受けることになったのだが)

私がそんなことを考えたりするのは、やはり私は、「家というものは、つまらないものであってはつまらない、おもしろいものでなくては」と思うからだ。

でも「おもしろい」と言うとよく誤解されるのは、それが「奇抜」ということと同義と受け取られることだ。
「おもしろい」というのは「奇抜」とは違う。
他人から見れば「奇抜」に見えたとしても、建て主(施主)本人にとっては決してそうではなく、まじめに自分の思いを実現させていった結果だ。

もうひとつ「ひとりよがり」の類似語と受け取られることもある。
これについては、その「おもしろさ」が建て主の思いを無視した設計者のひとりよがりであってはいけないのだけれど、建て主本人は大いに「ひとりよがり」であっていいと私は思っている。

ただ、「おもしろい」ということが「奇抜」とか「ひとりよがり」に陥らないためには、そこに品位というものが存在するかどうかによる。この点は重要だ。

たとえば絵画ならモネにしてもルノアールにしても、音楽ならブラームスにしてもチャイコフスキーにしても、それらの作品は当時としては「奇抜」とか「ひとりよがり」と感じられたかもしれない。しかしそれが長い年月に耐えて、人の心を癒す大切でかけがえのないものとして残ったのは、そこに品位というものがしっかりと保持されていたからである。

それは住まいの設計についても同様で、いつまでも住み手の心に働きかけ、癒す力を持ち、かけがえのないものになるためには、品位が保持されていることが重要だ。
私の言う「おもしろい」ということには、必ずその奥に品位ということが存在していることを前提としている。

さて、ではどういう家が「つまらない」かというと、それは建売住宅とかハウスメーカーの住宅とかが、その典型である。つまり万人向けの、あたらずさわらず、可もなく不可もない家のことだ。(ほんとうは不可のことも多いので、それは私の拙文「ここがおかしい日本の住まい」をお読みいただきたい)

しかしそれなら建築家(設計事務所)が設計した家は「おもしろい」のかというと、そうとも言えない。
皆さんも感じておられるかもしれないが、設計事務所が建てた家にも、実に画一的であり、おもしろみに欠けるものが多い。
その特徴としては、「ストイック」(禁欲的)と「気取り」というの二つの傾向があげられよう。
私の言う「おもしろい」というのは、これらに対するアンチテーゼでもある。
すなわち、もっと豊かで、楽しくて、大胆で、思いっきりがよくて、心の解放をもたらすような家ということだ。

但し、いま心の解放と言ったが、それは開放的な空間と作るいうことではない。
私がこれまで作った家には、音楽室、地下室、屋根裏部屋などがある。それらは閉鎖的空間であるが、その中にいることが心の解放をもたらすことになりうる。


と、ここまで、うだうだと書いてきたが、読んだ方は「つまらん!おまえの話はつまらん!」と仰っているかも知れない。その確率は70%くらいあるのではないかと思う。
そこで私は、話はこれくらいにして、これまで設計してきたいろんな家の中から、私の言う「おもしろい」例を、順次ご紹介していくことにしよう。

(次回に続く)

エレベーターの開閉表示

昔からズーと気になっていることがあって、それは何かというとエレベーターの押しボタンの開閉表示なのである。
下の写真のどちらが「開」でどちらが「閉」かというと、左が「開」で右が「閉」である。なぜかというと、マークの三角は矢印を表わしていて、それが左のボタンは外を向いており、右のボタンは内を向いているから、左が「開」で右が「閉」という理屈である。

エレベーター

しかし、私はとっさの時に、右が「開」で左が「閉」に見えてしまう。ドアが閉まりかけていて、誰かが乗ろうと走ってきたときなんかに、開けてあげようと思って、とっさに右のマークのボタン(つまり「閉」)を押してしまうことがある。皆さんは、そんなことはないだろうか。

これをある友人に言ったら、「そうだなあ。たしかに右のマークの方が発散的だよなあ。」と言った。(彼はカメラの設計をしている。カメラにも、マークのついた押しボタンがいろいろある。)

そうなのだ。明らかに右ボタンのマークの方が、“開く”という感じがある。つまり、三角は矢印で・・・という“理屈”と、視覚的な“感覚”とが、齟齬をきたしているのだ。
私は、これはエレベーターという、安全性を重視しなければならない設備において、大きなデザインミスではないかと思う。

久しぶりに政権交代もあったことだし(関係ないか)、この際、エレベータメーカーには、理屈と感覚の一致した、分かりやすくて間違いの起らない新しいマークを考案してもらいたい。

地下って暖房してるの?

先日、友人と地下駐車場に入ったら、その人が「駐車場を暖房するなんて、もったいないなあ」と言いました。
いえいえ、違うのです。暖房などしていないのです。地下は冬でも暖かいのです。
それを友人に説明したら、へえそうなのかと感心していました。

そういえば以前に、別の人と地下鉄の駅に降りていったら、やはりその人が、「地下鉄の駅は暖房しているから暖かくていい。」と言ったことがあります。
決して鉄道会社は駅のプラットフォームまで暖房したりしていません。先ほどの駐車場と同様に、地下は冬でも暖かいのです。

逆に夏は地上より涼しくなります。
地下は、まさに今はやりの省エネ・エコ空間なのです。

(私の設計室のHPの中の 「地下室のすすめ」 もご覧ください。)

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プロフィール

 遠藤 真

Author: 遠藤 真
------------------
建築家(一級建築士)
建築音響アドバイザー
兵庫県神戸市在住
遠藤 真・安田倫子 設計室
主宰
http://www.me-arch.jp/
Eメール: endo@me-arch.jp
あしたの住まい・設計フォーラム
代表
------------------
音楽演奏家(アマチュア)
主にバロック音楽奏者として
ヴィオラ・ダ・ガンバ
フラウト・トラヴェルソ
ブロックフレーテ(リコーダー)
を演奏
神戸ホルボーンアンサンブル主宰
------------------
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