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建築家であり 音楽愛好家でもある 私の雑記帳

防音は外より内をしっかりと

はじめて防音室をつくることになって、私どもの設計室に相談に来られたお客様は、たいてい次のようにおっしゃいます。

「夜や休日にピアノを弾いても、お隣やご近所に迷惑がかからないようにしたいんです。だから外に音が漏れないようにしっかり作ってほしいんです。え?家の中の他の部屋についてですか。それは少しぐらい聞こえてもいいんです。家族なんですから。」

ところが、すでに他の工事会社で作った防音室を持っておられて、それに不満があって相談に来られたお客様は、たいてい次のようにおっしゃいます。

「家の中の他の部屋に音が伝わらないようにしてほしいんです。私がピアノを弾くと、主人がうるさがります。息子は受験勉強に身が入らないといいます。え?隣近所ですか。それは今のままでいいんです。特に苦情もありませんし。」

そうなんです。本当に注意しなければならないのは、家の中の部屋どうしの遮音なんです。しかもそれがなかなか難しいのです。
近所の家に対する防音については、両者(両家)はそれぞれの外壁という比較的厚くしっかりした壁で向き合っています。しかも両者は互いに距離があります。そして構造的にはつながっていません。別々です。

ところが一つの家の部屋どうしは、間仕切壁という、比較的薄くシンプルな作りの壁で仕切られているにすぎません。天井裏などはそのような仕切りもなく、つうつうです。そして部屋どうしは互いに接しており、構造的にも一体です。

どう考えても、隣近所への遮音よりも、家の中の部屋どうしの遮音のほうが、格段に難しいのです。

だからお客様が、近隣への遮音はしっかりしてほしいけど、家の中の部屋どうしはそこそこでいい、とおっしゃっても、決してそれを真に受けてはいけません。
それを真に受けて、部屋どうしの遮音をおろそかにすると、必ず後で問題になります。

ところが防音工事の(特に音楽室についての)経験の少ない設計士や工事業者は、そのことに思い至らず、また工事費を安くあげるために、部屋どうしの遮音をおろそかにしてしまうことがたいへん多いのです。

ですから皆さんが防音室をお造りになるときは、設計士や工事業者に対して、近隣に対してだけでなく、家の中の部屋どうしの遮音もしっかり行ってほしいことを、きちんと告げるようにしてください。
でないと、せっかく防音室をつくったのに、やっぱり気兼ねしながらピアノを弾かなければならないといいうことに、なってしまいます。

(もっとも、それ以前に、近隣に対しても十分な遮音ができないような設計士や工事業者が日本には多い、というより殆どなので、そのことの方が問題なのですが・・・)



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インターネットで、ある質問と回答を読んで

インターネットに、次のような質問と回答のやりとりが掲載されていました。

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【質問】 Rさん ( 大阪府 / 女性 / 39歳 )

ピアノ室の防音について

ピアノ部屋防音についてお伺いさせて頂きます。

・設置場所は木造1階
・15〜16帖のフローリング
・はき出し窓1つ、小窓2つ&入口1つ(予定)
・グランドピアノYAMAHA C2
・広く使いたいためピアノ以外は設置しない

新築を予定していまして、1階にピアノ教室を作りたいと思っています。
ピアノだけでなくグループレッスンも希望。

そこで工務店に防音をお願いしたところ、床も含めて壁全面に鉛のシートを入れ、窓はペアガラス、扉は分厚い防音用のもの。とのお返事を頂きました。

私としては防音と遮音、さらに音響のことを考えたいのですが、工務店としては「カラオケ店の防音は何度も経験しているからご近所への音の配慮は自信がある。しかし残響のことを言われてもわからない。どの材料を使用すれば良いのかパンフレットなどを探してきてくれたらそれを購入して施工します」とのことでした。

私も防音のプロではないので、「ご近所にご迷惑をかけない・ピアノを弾いても心地よい残響にして欲しい」との希望をお伝えすることしかできません。

防音室だけ別の業者にお願いすることは不可能との返答ですので、今後どのようにしていけば良いのか困っています。

アドバイス頂けないでしょうか。

また工務店の内容での効果は如何なものでしょうか。
ペアガラスと2重サッシの効果の違いなどについても教えて頂けると嬉しいです。

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【回答】 建築家 M氏 

Rさんこんにちは
○○建築工房のMと申します。

快適に楽器を演奏するためには、おっしゃるように、音を家の外に漏らさない''遮音''と、部屋内部の''音響コントロール''の両方が必要です。

**遮音
どの程度の遮音性能を望まれますか。
グランドピアノは、音量も大きく、音域が広いので、遮音難易度は高いです。

夜中でも気兼ねなく演奏できる(音を漏らさない)レベルにするのは、結構大変です。

ある遮音性能の壁で、スキマなく覆うことが必要です。
スキマから音が漏れ、性能の弱い部分で遮音性能が決まります。
窓、扉、換気扇は要注意です。
一般の住宅サッシは余り遮音性能は高くなく、はき出し窓は、サイズが大きく、遮音性能は悪いです。

ペアガラスは2重なので遮音性能が高いと誤解されることがありますが、周波数帯によりガラスが共鳴するので、単ガラスより遮音性能が悪いです。

この点だけを見ても、工務店さんの防音仕様はNGです。

**内部音響
音楽ホールの残響は、壁面からの時間差の反射音により生まれます。
16畳位のホールと比べ小さな部屋の場合、反射が強いと、快い残響でなく、うるささだけで、非常に不快となります。

吸音が強すぎると、演奏したとき音量が出ず、頼りなく感じてしまいます。

床はフローリングで、音を反射させるので、壁1面に厚手のカーテンを設置し、コントロールするのが良いと思います。

木造住宅でも適切に設計し、注意深く施工すれば、快適にピアノ演奏できる環境は可能ですが、工務店は余り知識がないようなので、アビテックス(ヤマハ)のような防音室を使うのが無難ではないでしょうか。

参考にしていただけたら幸です。

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とまあ、こんなやりとりです。

建築家M氏の回答は、ごく妥当な内容で、問題ありません。少なくとも最後の方の「・・・工務店は余り知識がないようなので」というところまでは。

しかしその後で「アビテックス(ヤマハ)のような防音室を使うのが無難ではないでしょうか。」って。
Mさん、それはないでしょう。その前に「適切に設計し、注意深く施工すれば、快適にピアノ演奏できる環境は可能です」とお書きになっているではないですか。
だったらどうしてご自分で設計し、監理してあげようとしないのですか。どうしてアビテックスのような既成防音室(しかも値段がべらぼうに高い)をお勧めしてしまうのですか。

結局Mさんも、工務店よりは知識はあるけれども、それを行う技術力はないということをさらけ出していることになりはしませんか。
最後に「参考にしていただけたら幸です。」とおっしゃっていますが、結局なんだかんだ言っても、最後にはアビテックスにしときなさいというのなら、それ参考にもなにもならないじゃないですか。

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プロフィール

 遠藤 真

Author: 遠藤 真
------------------
建築家(一級建築士)
建築音響アドバイザー
兵庫県神戸市在住
遠藤 真・安田倫子 設計室
主宰
http://www.me-arch.jp/
Eメール: endo@me-arch.jp
あしたの住まい・設計フォーラム
代表
------------------
音楽演奏家(アマチュア)
主にバロック音楽奏者として
ヴィオラ・ダ・ガンバ
フラウト・トラヴェルソ
ブロックフレーテ(リコーダー)
を演奏
神戸ホルボーンアンサンブル主宰
------------------
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