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建築家であり 音楽愛好家でもある 私の雑記帳

北海道で、音楽練習室(防音室)の工事

北海道で音楽練習室の施工依頼があり、先日完成しました。

インターネットで私の設計室のホームページをご覧になった方からお電話があり、半年ほど前にご自宅を地元の工務店の工事で新築されて、その中に音楽練習のための約10畳の大きさの防音室を作られたのだけど(奥さんはピアノを、ご主人は金管楽器を演奏される)、その部屋の音が悪くて、なんとかならないだろうかというご相談でした。
その後にいただいたお手紙の一部を記します。(一部、音と関係のない部分を略していますが、ほぼ原文どおりです)

「このたび一番希望していることは、防音室内でピアノや金管楽器を演奏する時に快適な音響を得たいということです。現在の防音室は、吸音材の壁で覆われているために響きが全く無く、心地よい楽器の響きが感じられません。ピアノの音は、演奏者に音が返ってこないので、ペダリングを多用してしまうなどの問題がおこっています。金管楽器を吹くと、向きによっては弱音器をつけたような変な音に聞こえます。計画段階から専門の方に相談すべきであったと後悔しております。
もう一つ希望していることは、深夜でも音が出せるようにしたいということです。現在、子供の部屋などのある2階に、1階よりもはっきりと音が聞こえる状況で困っています。」

そんな状況で、何かよい解決策はないかと、いろいろインターネットで調べておられたところ、私どもの設計室のページに行き当たられたそうです。そして、そこに書いてあることを読まれて、これだ、依頼するのはここしかないと感じられて、連絡をされてきたそうです。

お手紙に書かれている内容は、まさに、音楽や楽器の響きのことを知らない業者がやった防音室の、典型的なケースです。
ですから私どもとしては、このようなご不満を解決することは、工事的には全然問題なくできますし、言うなれば朝飯前のことなのですが、場所を聞いてビビりました。
北海道、しかもかなり北の方だったのです。

私どもは事務所が神戸にあるので、仕事も京阪神が多く、実は一番遠いところでも名古屋までしかやったことがなかったのです。
それでともかく音響工事担当のM氏と相談したのですが、彼いわく、既存住宅内の防音室の音響を改善するということなら、できますよということだったので、引き受けることにしました。

施主さんとは、できるだけ電話やメールで相談し、図面や写真を送ってもらって具体的な工法を決め、見積書も提出しご承認を得た上で、担当のM氏が、現地に赴くことになりまました。
しかし工事をするためには、工具やある程度の資材は持っていかなければなりませんから、飛行機で一っ飛びというわけにはいかず、車で神戸から舞鶴まで本州を横断し、そこからフェリーに乗って20時間波に揺られて小樽に到着。そこから目的地まで再び車で350キロを走破という、まるまる2昼夜をかけた行程となりました。

M氏は現場近くに宿をとって、そこから7日間、現場に通いつめて、工事を完成させました。

なかなかハードな工程ではありましたが、結果は、施主さんにたいへんご満足をいただき、喜んでいただいて、次のようなメールをいただくことができました。

「この度は本当にありがとうございました。響きはとてもいい感じになりましたし、工事もとても丁寧にしていただいて大変感謝しております。
ピアノもお陰様で音が響くので、軽いタッチで弾けるようになりましたし、金管楽器も実力以上に音が良くなった錯覚?で気持ち良く吹いています。また、工事前は家中に響いていた音もかなり抑えられ、家族で気兼ねなく音楽室を使うことができるようになりました。
本当にありがとうございました。」

とても嬉しいメールで、お引き受けしてよかったと思いました。
ただ、私として惜しむらくは、この音楽室は天井高が2.15mしかなく、本当はもっと高くしたかったのですが、それだけは元の構造体がそういう造りになっていたので、どうしようもありませんでした。
少なくとも2.4mあれば、もっと伸びやかな音にすることができて、響きの改善と相まって、さらに豊かで気持ちの良い音響にすることができたのにと残念です。
でもそれは、新築の設計段階から、それを考慮して構造体の設計をしておかなければならないので、仕方がありませんでした。

ともあれ、そんなわけで、今回の経験によって、日本国内ならどこでも対応できるという自信がつきました。
北海道に比べると、これまで最遠だった名古屋なんて、なんと近いところでしょう。
ですので、ご遠方であっても音のことで悩んでいる方がおられましたら、どうぞいつでもご相談のお電話かメールをください。しっかりと対応させていただきます。
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クラシックのコンサートに一度も行ったことがないようなオッチャンが   音楽レッスン室の防音工事をしているという現状


前回、"外に対する防音だけでなく、内に対する防音もしっかりと行う"ということを書いたのですが(その記事はこちら)それとともに私どもへの相談で多いのが「部屋を防音したら、今までよりも音が悪くなった」という相談なのです。

普通の部屋を、防音工事を行うことによって、きちんとした音楽室にしようとしたのに、よもやそれによって、かえって音が悪くなることがあるとは、皆さんは思ってもみないかもしれません。でも遮音はよくなって近所に対する音漏れは少なくなったけれど、ピアノの音がカスカスした音で全然響かなくなってしまったというケースは、かなり多いのです。

その原因は、たいていの場合、不適切な吸音材の使用なのですが、それ以前の問題として、そもそも防音業者の中には、音楽についての知識や素養が全くない者が、たいへん多いということがあります。そのような業者は、音が外に漏れないようするという遮音のことは考えていても、音楽室内部における「楽音(がくおん)」について全く念頭にない人がほとんどです。

皆さんは、防音工事をする業者ならば、ある程度の音楽的素養は持っているだろうと思っているかもしれませんが、実は防音工事を行っている業者の中には、道路からの交通騒音や、飛行場の近くの騒音を防ぐという工事から入った人が多く、そのような人は音楽についての知識や感性が全くない場合が少なくありません。実際、クラシックのコンサートへ一度も行ったことがなかったり、グランドピアノの音を間近で聴いたこともないようなオッチャンが、音楽レッスン室の工事を行っているというのが、ほとんどなのです。

そのような業者は、音楽的な良い音、良い響きというものがどのようなものなのか全くわかっていませんから、ただ遮音をすることだけしか頭になく、そのために室内の壁や天井にやたらに吸音材を使用して、楽器の音を殺してしまうということを平気でしてしまうのです。

そもそも音楽室を作る目的は、そこで良い音や良い響きを楽しむためであって、遮音対策もそのための有効な手段の一つですが、それと同じくらいか、あるいはそれ以上に大切なのが室内音場(音質や響き)の調整です。しかし、そのことが全くできない(というよりそのことが念頭にない)防音工事屋が本当に多いのが、この業界の現状なのです。

ですから皆さんが"音楽室のための"防音工事を依頼するならば、必ず「音楽を分かっている人」に依頼しなければなりません。そうでなければ、失望的な結果になります。どうかその点に、くれぐれも気をつけていただきたいと思います。

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プロフィール

 遠藤 真

Author: 遠藤 真
------------------
建築家(一級建築士)
建築音響アドバイザー
兵庫県神戸市在住
遠藤 真・安田倫子 設計室
主宰
http://www.me-arch.jp/
Eメール: endo@me-arch.jp
あしたの住まい・設計フォーラム
代表
------------------
音楽演奏家(アマチュア)
主にバロック音楽奏者として
ヴィオラ・ダ・ガンバ
フラウト・トラヴェルソ
ブロックフレーテ(リコーダー)
を演奏
神戸ホルボーンアンサンブル主宰
------------------
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