住まいの設計におけるノスタルジー性(なつかしさ)の大切さ
2019-05-14
これまでたくさんの家を設計にたずさわってきました。
私は建築家(設計事務所)なので、ハウスメーカーのように規格型住宅をベースとする家作りとは違い、一つ一つの家においてクライアント(施主)さんと向かい合い、その意向を汲み取った家をつくることを仕事としてきました。
(ただし建築家のすべてがそのような考え方ではなく、自分の設計ポリシーを頑なに守る(悪く言えば押し付ける)建築家もおられることは私も承知していて、それを悪く言うつもりはありませんが)
そのような仕事の中で最近感じることは、クライアントさんがご自身の心において「なつかしさ」を感じられる家というものがあって、それを再現することを望まれているケースが増えているということです。
一昔前までは、そのようなクライアントさんは比較的少なくて、未来志向ともいえるようなモダンでシャープな造形の家に一種の憧れを持っているかたも多く、むしろそのような家を設計するのが建築家だと思われていたようです。
しかし、だんだんとそのような未来志向が影を潜めて、むしろ懐古志向とでもいうのでしょうか、自分の昔の「なつかしさ(ノスタルジー)」が感じられる家に住みたいという方が増えているように感じます。
そのことを懐古趣味という、いささかネガティブな意味合いを含んだ言い方でくくってしまうこともできるかもしれませんが、私はそのように一口に言ってしまえることでもないように思います。
昔、「住宅は住むための機械である」と豪語した建築家もいたと聞いていますが、その時代にはその時代の考え方があったとはいえ、現在においては通用しない言葉でしょう。なぜならば、家というものは、現代においては寛ぎや憩いという情緒的な安定のためスペースとしても意味合いが強く求められているからです。
そこにおいて、一人一人が持っているノスタルジー(なつかしさ)の再現というのは、住まいを設計する上においてのきわめて大切な要件であるように思われるのです。
私は最近のそのような住まいの設計思潮のシフトを、明るい気持ちで肯定的に受け取っています。
(次回は、それを象徴する二つのこと「ヴォーリズ設計の住宅」のことと「同潤会アパート」のことを述べてみたいと思います。)
私は建築家(設計事務所)なので、ハウスメーカーのように規格型住宅をベースとする家作りとは違い、一つ一つの家においてクライアント(施主)さんと向かい合い、その意向を汲み取った家をつくることを仕事としてきました。
(ただし建築家のすべてがそのような考え方ではなく、自分の設計ポリシーを頑なに守る(悪く言えば押し付ける)建築家もおられることは私も承知していて、それを悪く言うつもりはありませんが)
そのような仕事の中で最近感じることは、クライアントさんがご自身の心において「なつかしさ」を感じられる家というものがあって、それを再現することを望まれているケースが増えているということです。
一昔前までは、そのようなクライアントさんは比較的少なくて、未来志向ともいえるようなモダンでシャープな造形の家に一種の憧れを持っているかたも多く、むしろそのような家を設計するのが建築家だと思われていたようです。
しかし、だんだんとそのような未来志向が影を潜めて、むしろ懐古志向とでもいうのでしょうか、自分の昔の「なつかしさ(ノスタルジー)」が感じられる家に住みたいという方が増えているように感じます。
そのことを懐古趣味という、いささかネガティブな意味合いを含んだ言い方でくくってしまうこともできるかもしれませんが、私はそのように一口に言ってしまえることでもないように思います。
昔、「住宅は住むための機械である」と豪語した建築家もいたと聞いていますが、その時代にはその時代の考え方があったとはいえ、現在においては通用しない言葉でしょう。なぜならば、家というものは、現代においては寛ぎや憩いという情緒的な安定のためスペースとしても意味合いが強く求められているからです。
そこにおいて、一人一人が持っているノスタルジー(なつかしさ)の再現というのは、住まいを設計する上においてのきわめて大切な要件であるように思われるのです。
私は最近のそのような住まいの設計思潮のシフトを、明るい気持ちで肯定的に受け取っています。
(次回は、それを象徴する二つのこと「ヴォーリズ設計の住宅」のことと「同潤会アパート」のことを述べてみたいと思います。)
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「何か防音室に特別なことをしてあるんですか?」
2019-05-09
先日、私どもが作った音楽ルームのオーナーさんから、次のようなメールが来ました。
(個人情報に当たる部分は少し略していますが、ほぼ原文のままです)
「きょう、私の防音室を 演奏活動をしておられる ヴァイオリン、チェロ、ピアノ の トリオの方が 使ってくださいました。
終わったあと 『こういうところは すぐにクッと耳に圧迫感が来るのだけれど ここは音の響きがとてもよかった ○○(公共の音楽ホール)の練習室よりも こちらの方がかなり良い』 と 口々におっしゃいました。
先日も 演奏活動もされているピアノ講師の方に『とても響きがいいのだけれど 何か防音室に特別なことをしてあるんですか』と きかれました。
耳のこえた方々に 褒めていただいています。本当に嬉しくて 改めて 感謝しています。
嬉しくて 報告したくなりました。」
このようなメールをいただき、こちらもたいへん嬉しくなって感激しましたが、この「何か防音室に特別なことをしてあるんですか?」というのは、実はよく言われることなのです。
その答えは、ある程度特別なことはしています。それは壁・天井・床における吸音要素と反響要素の配置です。たとえ狭い空間であっても広く感じられて、音に伸びやかさや余裕感、潤いを与えるノーハウがあるので、それを駆使していることは事実です。(具体的なことは、この場ではお伝えすることができませんが、いわば優れた楽器製作者が持っている独自の技法のようなものです)
とはいえ、長年音楽ルームづくりをやっていますと、部屋を見れば音が想像できるようになります。(それは私自身が楽器を演奏する音楽愛好家で、いろんなところで部屋の音響を体験しているからかもしれませんが)
新築の場合だけではなく、既存の部屋をリフォームして防音室にする場合でも、工事前の部屋の形を見れば、完成後の形と音がイメージできます。またクライアントさんとお話をして、演奏される楽器のことを聞いたり、どんな音楽がお好きかということを聞けば、どのような音にすればよいかがわかります。
このような感性は私だけでなく、当設計室において実際の防音工事を担当する三宅や片山も同じように、いや私以上に持っています。このことが、音楽ルームづくりにはたいへん重要なのです。
上記のノーハウも、そのような感性があっての上で生きてきます。
そういう意味では、やっぱり私の設計室が創る防音室は「何か特別なことをしてある」と言えるように思います。
(個人情報に当たる部分は少し略していますが、ほぼ原文のままです)
「きょう、私の防音室を 演奏活動をしておられる ヴァイオリン、チェロ、ピアノ の トリオの方が 使ってくださいました。
終わったあと 『こういうところは すぐにクッと耳に圧迫感が来るのだけれど ここは音の響きがとてもよかった ○○(公共の音楽ホール)の練習室よりも こちらの方がかなり良い』 と 口々におっしゃいました。
先日も 演奏活動もされているピアノ講師の方に『とても響きがいいのだけれど 何か防音室に特別なことをしてあるんですか』と きかれました。
耳のこえた方々に 褒めていただいています。本当に嬉しくて 改めて 感謝しています。
嬉しくて 報告したくなりました。」
このようなメールをいただき、こちらもたいへん嬉しくなって感激しましたが、この「何か防音室に特別なことをしてあるんですか?」というのは、実はよく言われることなのです。
その答えは、ある程度特別なことはしています。それは壁・天井・床における吸音要素と反響要素の配置です。たとえ狭い空間であっても広く感じられて、音に伸びやかさや余裕感、潤いを与えるノーハウがあるので、それを駆使していることは事実です。(具体的なことは、この場ではお伝えすることができませんが、いわば優れた楽器製作者が持っている独自の技法のようなものです)
とはいえ、長年音楽ルームづくりをやっていますと、部屋を見れば音が想像できるようになります。(それは私自身が楽器を演奏する音楽愛好家で、いろんなところで部屋の音響を体験しているからかもしれませんが)
新築の場合だけではなく、既存の部屋をリフォームして防音室にする場合でも、工事前の部屋の形を見れば、完成後の形と音がイメージできます。またクライアントさんとお話をして、演奏される楽器のことを聞いたり、どんな音楽がお好きかということを聞けば、どのような音にすればよいかがわかります。
このような感性は私だけでなく、当設計室において実際の防音工事を担当する三宅や片山も同じように、いや私以上に持っています。このことが、音楽ルームづくりにはたいへん重要なのです。
上記のノーハウも、そのような感性があっての上で生きてきます。
そういう意味では、やっぱり私の設計室が創る防音室は「何か特別なことをしてある」と言えるように思います。