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建築家 & 音楽愛好家 の雑記帳

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2021-01-14 (Thu)  23:01

これだけは言っておかねばならない・・・防音室の遮音性能のごまかし

最近、新居に防音室を作りたいという人(仮名Kさん)から相談があり、何回かのメールのやりとりの後、基本設計図と見積書を送りました。

その後、4通のメールのやりとりがありましたが、それをほぼそのまま、ここに載せます。皆さんの防音室作りの参考にしていただきたいと思います。


--------(1)Kさんからのメール---------

遠藤さん
Kです

お見積、ありがとうございました。

申し訳ありませんが、防音室工事は他社へ依頼致します。
共に住宅に対する防音室工事について信頼できると感じましたが、
Dr50で予算内に納められることが決め手になりました。

様々な検討をして頂きましてありがとうございました。
また、ご縁がありましたらよろしくお願いします。


--------(2)遠藤からの返信---------

Kさま

メールを読ませていただきました。

>Dr50で予算内に納められることが決め手になりました。

この防音業者さんが言っている Dr50というのは、建物本体の遮音性能と、防音室単体の遮音性能を、合算した値だと思います。
(一般住宅用の防音室単体でDr50というのは、通常考えられません。)

当方の作る防音室は防音室単体で、標準仕様でDr35ですので、建物本体(一般的な木造住宅の遮音性能はDr20くらい)と合算しますと、Dr55となります。

Dr55とDr50は、音圧レベルとして約3倍の差があります。
つまりピアノを1台で弾いたときと3台で弾いたときの、音量の差です。

お間違えになってはいけません。


--------(3)Kさんからの返信---------

遠藤さん
Kです

早速のご返答ありがとうございます。
単体でDr50は考えられないというのはどういうことでしょうか?
物理的に一般の木造住宅に入らないと言うことでしょうか。

契約書にDr50と明記され、防音性能値を完成後立ち会いで実測して、達成しない場合は補修と明記すると言われています。
さすがに契約書にありえない数値を記載することはないと思うのですが。


--------(4)遠藤からの再返信---------

Kさま

ご返事ありがとうございます。

>単体でDr50は考えられないというのはどういうことでしょうか?
>物理的に一般の木造住宅に入らないと言うことでしょうか。

防音室単体でDr50にしようと思ったら、厚さ20センチの鉄筋コンクリートの窓無しの箱にするくらいしか方法がないのです。一般の木造住宅の中に作る防音室では、ありえません。

しかし「契約書にDr50と明記され・・・」という文言から、それは防音室単体の値ではないことは、はっきりしました。
これは防音室単体と建物本体の壁を合算してDr50ということですね。
つまり、防音室単体のDr値は明示されていないのです。建物の間仕切り壁や外壁の遮音性能をどれくらいと仮定しているのかもわかりません。

また「完成後に実測する」ということですが、どのようにして測るのかということに、注意する必要があります。
防音室内で音源の音を、その直近に騒音計を置いて測ったら90デシベルだった場合、外に出て測って40デシベルになったからといって、壁(外壁と防音室の合算)の性能が「Dr50」ということにはなりません。なぜならば、音源と騒音計の距離が違うからです。音源と騒音計の距離が離れれば数値が下がるのは当然です。
例えば、室内で測ったときの音源と騒音計の距離が1mで、外に出て測ったときの音源と騒音計の距離が4mだったとしますと、音圧は距離の二乗に反比例しますので、それだけで1/16になります。その値を補正しなければ、防音壁(外壁+防音室)の正しいDr値は出ません。
またその音源がどのようなものかということも問題です。防音業者によっては小型のスピーカーを持ってきて、それを音源とする場合がありますが、高音域が多くて低音域が少ない音源では、正しい測定にはなりません。なぜならば高音域の遮音は簡単ですが、低音域の遮音は難しいからです。

それにもかかわらず、騒音計の表示している数値だけを見せて、「ほらこのとおり契約どおり」というのは、心ない防音業者が素人のお客さんをだます手段の一つです。
もちろんKさまがご契約されようとしている業者が、そのような業者だというつもりはありません。
しかし、世間にはそのような業者もいるということは、一応知っておいてください。

私は、一番確かなのは、人間の耳だと思っています。
完成したときに、本当にそこで奏でる楽器や声楽の音を、お客様と防音室製作者が一緒に外で聞いてみて、「うん、なるほど、この音ならば大丈夫だ!」と感じられることが一番確かな確認方法です。

と、いろいろ書きましたが、K様に、正しいことを知っておいてもらいたいという一心で書きましただけで、他意はございません。
K様がお書きのように「ご縁がありましたら」またお会いいたしましょう。

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以上が見積書提出以降のメールのやりとりですが、ここで私が言いたいのは、防音室の遮音性能をDr値で表示するとき、本来は防音室単体の性能を表示すべきだということです。
例えばヤマハなどは、自社の防音室の性能を「Dr35」(標準的な仕様の場合)と正しく表示しています。
防音室は建物本体の内部に作るのですから、外部に対する防音性能は、防音室単体と建物本体とを合算した値になります。メールのやりとりの中でも述べていますように、防音室がDr35で建物本体の遮音性能がDr20(建物の仕様によって、かなり変わります)であれば、外部に対しては35+20で Dr55の遮音性になるわけです。(もちろん、両者を音響的に分離して十分な空気層を設けるという正しい設計のもとに、確実な施工をした場合です)

ところが最近、この合計値をあたかも防音室単体の遮音性能のように見せかけて「我が社の防音室はDr50」などとPRする業者が現れました。
知識の少ない一般の方がそれを見ると、この業者の防音室は、ヤマハのアビテックスよりも15デシベルも防音性能が高い!と思ってしまうわけです。このような宣伝は、そんな誤解を生じさせるように、意図的に行なわれたものである可能性が濃厚です。

どうか、だまされないようにしていただきたいと思います。
良心的な防音室製作者は、ちゃんと防音室本体の遮音性能(Dr値)を表示しています。

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最終更新日 : 2021-01-15

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